金融機関が融資で見るポイント 貸借対照表編
金融機関が融資で見るポイント 第2回として貸借対照表についてご紹介したいと思います。
貸借対照表とは?
貸借対照表とは一言でいうと、「その企業の一定時点(事業年度末など決算書の作成時点)の財産状態をあらわしたもの」です。
その企業の財産(プラスの財産である資産やマイナスの財産である負債)の内容がつまっているものになり、これまでの事業を行ってきた結果が積み重なったものでもあります。
金融機関はそんな貸借対照表のどこをどのように評価しているのでしょうか?
貸借対照表のポイント
1 債務超過(純資産のマイナス)
債務超過とは、資産(預金、売掛金、土地建物など)から負債(買掛金、未払金、借入金など)を引いた金額(純資産)がマイナスになっている状態です。
言い換えると、会社のプラスの財産(資産)よりマイナスの財産(負債)の方が多く会社に財産(純資産)が無い状態と言えます。
その企業が債務超過かどうか?は銀行がまず確認する項目です。
状況にもよりますが、債務超過の場合は融資が難しくなることが多くなり、かなり重要です。
ただし、「決算書の貸借対照表のそのままの数値だけで債務超過を判断しているか?」というとそうではなく、次からご紹介する項目を考慮しながら判断しています。
2 役員からの借入金
中小企業の場合には、会社の資金繰りが苦しい時に社長が自分個人のお金を投入することはよくあります。
社長(役員)からの借入金は外部からの借入金と違い、銀行は一般的には(返済できないときは)すぐに返済する必要のないものと見ます。
その結果「役員借入金は資本と同じもの」とみなしてくれます。
具体的には純資産のプラス評価になります。
3 役員への貸付金・仮払金など
逆に中小企業では、社長に対する使途の良くわからない出金が仮払金や貸付金として処理されていることがままあります。
これは、やむを得ない事情がある場合もあります。
ですが、社長が浪費したものであったり、ずさんな経理が原因であったりすることも多いです。
銀行もそのあたりは良く分かっているので、多額の仮払金や貸付金がある場合には必ず使途や返済時期等についてチェックしてきます。
結果として、社長からの返済が見込めないと判断された場合には「資産としてはないもの」とみなされます。
具体的には純資産のマイナス評価になるので注意しましょう。
4 棚卸資産(在庫)
棚卸資産(在庫)についても「適正」なのかどうかチェックされやすい項目になります。
損益計算書で「利益」を出すために「在庫の数値を操作されること(つまり粉飾決算)が多い」からです。
数値の上では、同業種の平均と比較して過大になってないか?
理由が説明できないような前年と比較して大きな増加はないか?
中身ついては不良在庫が無いか?
などがチェックされます。
結果として、在庫が過大と判断された場合には棚卸資産がマイナスされます。
具体的には純資産のマイナス評価となります。
5 土地等の時価評価
基本的な考え方
銀行の考え方として貸借対照表に掲載されている土地等の資産については、原則的には時価評価です。
決算書に載っている金額は大体の場合、取得した時の取得金額そのままということが多いです。
そうなると、バブル時代に購入した土地で大暴落しているような場合、今売ってもその金額ではとても売れない(つまり含み損がある)ということがあります。
その含み損を考慮する為に時価評価を行い、含み損の分はマイナス評価になります。
逆に買った当時よりも価格が上がっている場合(含み益がある)はその分はプラス評価になります。
このように時価評価が基本になりますが、事業の継続に必要な「事業用資産」については考え方が変わります。
事業用資産の場合
実は、時価評価については2種類の考え方があります。
① 継続企業前提(ゴーイング・コンサーン)の時価
② 清算企業前提の時価
です。
①と②の時価の詳細な説明は省かせていただきますが、結論から言うと、銀行が企業の債務超過を判定する場合の時価は通常「ゴーイング・コンサーン」です。
ゴーイング・コンサーンとは、あくまでも「その企業(事業)が将来に渡ってずっと継続していく」ということを前提とした考え方です。
ゴーイング・コンサーンの時価評価とは具体的にどうなるのか?
事業用資産は事業の継続に必要なものです。仮に事業用資産に含み損があるとしても事業を継続している限りその企業が売ることはありません。
つまり、含み損が現実になることもありません。
ゴーイング・コンサーンでの時価評価とはこのような考え方から「事業用資産については含み損があっても簿価(決算書の金額そのまま)」で評価します。
少し難しい専門的な話になりましたが、土地等の資産については状況によって評価金額がかなり変わってきます。
まとめ
第2回として貸借対照表のポイントをご紹介してきました。
こちらも損益計算書と同じく金融機関は「決算書の貸借対照表の数値をそのまま受け取っているわけではない」ということがご理解いただけたと思います。
上記のようなことをふまえた上で
決算書の貸借対照表でチェックされるポイントをどのように説明するか?
あるいは決算前に一時的にでも問題となるポイントを解消できないか?
このあたりは、税理士の中でも融資に強いかどうか?でアドバイスに差がつくポイントになると思います。
金融機関に対する対応などで相談がご希望の方は、神戸の曽禰会計事務所まで是非お気軽にお問い合わせください。