原価管理 その2
小規模事業での原価管理
繰り返しになりますが、創業・起業したばかりの会社、個人事業でも原価管理は必要です。
ただし、原価計算は正確で詳細までできればその方が良いですが、小規模事業では細かくやり過ぎることは現実的ではありません。
管理の為に高価な専用システムを導入することも、データ入力や集計にも時間や人件費がかかります。
原価管理によって費用を削減しようとして、逆に管理費用が増えてしまっては本末顛倒です。
原価計算を一生懸命しすぎて、数字を出すことが目的になってしまい原価管理(継続的な改善)まで手が回らない場合も意味がありません。
自分の状況にあわせ優先順位を決めてシンプルに管理する必要があります。
原価管理の優先順位
1 全体の総原価と原価率
全体の総原価と原価率の把握は必須です。これが把握できないと何の計画も予測も立てることができません。
ただ、全体数字は会計データをきっちり入力すれば自然とわかります。
経営者と経理(あるいは税理士)の間で直接費となる原価と間接費になる費用だけしっかり共有していれば把握できます。
2 個別の原価(製品・商品ごと等)
厳密な原価計算(製品・商品別の細かい集計)までは大変なので、優先順位を付けて管理します。
つまり、利益に大きく影響する部分はしっかり管理し、それ以外はアバウトに総額だけ見るようにします。
例えば業種ごとに管理するポイントをあげると
飲食店業
→専門店でのメイン食材(ふぐ料理のふぐや蟹料理の蟹など)の原価
→季節ごとのメニュー作成時の各メニューの原価
→アルバイト人件費の月間での予算管理(目標売上・前年同月売上の何%など)
建設業
→個別工事ごとの原価管理は100万円以上の工事(金額は事業規模によります)など一定以上の金額の工事原価(材料、外注、人件費など)
小売業等
→販売数の多い(売上金額に占める割合が大きい)商品原価
→高価な商品の場合には商品単価が高いので商品については原価の個別管理をする。そのかわりにそれ以外の費用については会計データの総額でのみチェック
上記は一つの例ですが、金額の大きなものや、メニュー作成のように特別なときにしかやらない、かつ、影響の大きいものにしぼることがポイントです。
3 シンプルに
直接費と間接費で言うと、直接費の方が集計に手間がかかります。
直接費は製品・商品と直接対応する仕入原価など、個別に集計する必要があるからです。
間接費(地代家賃や減価償却費など)はそもそも個別に集計ができません。売上全体にかかる費用なので、その総額を把握するだけになります。
そこで、厳密には直接費になるようなものでも重要でないものは間接費にします。影響の小さい部分はできるだけシンプルにする割り切りが必要です。
厳密な原価管理では一つの費用(例えば人件費など)を合理的な基準で直接費と間接費に按分しますが、これも小規模な事業や最初に原価管理を始めるときには必要ないと思います。
小規模事業の強み
創業・起業したばかりの経営者であれば仕入れから生産や販売まで自ら携わることが多いです。
つまり経営者が「現場」に出ています。
部署ごとに別の担当者がいる大企業と比較して、目標と実績に差が出た場合の原因の洗い出し→改善がスムーズにいきやすいです。
経営と現場の距離が近いことは、問題改善や意思決定のスピードの速さにつながり、ここが小規模事業の強みになります。
まとめ
最初から売上を立てられる方、うまくいかなくて試行錯誤する方など様々です。
ですがその先まで利益を継続的に出せる経営者は、原価管理がしっかりしている方が多いと感じています。
方法はこれまでの経験を活かしたり、自己流だったりなどで構いません。
まずはできることから始めることが大事だと思います。